リスト:愛の夢 3つの夜想曲 第3番


愛の夢(=Liebestraum)は、「3つの夜想曲」という副題がついており、有名なのは第3番。
愛の夢といえば第三番ばかりが演奏されていることが多いですが、実は第1番、第2番もあります。

第1番「高貴な愛」はこちら
第2番「私は死んだ」はこちら

第3番は「おお、愛しうる限り愛せ」。

コード奏法で楽曲を弾く私には、この曲は苦手。右手が伴奏で左手がメロディーというのができなくて。

実は、左右逆転して弾いています。

さて、この曲、元々は、ソプラノのための独唱歌曲として書かれた作品だそうで、その後ピアノバージョンとして編曲されたそうです。

・・・ということで、歌詞があって、歌曲バージョンの中でも日本語字幕付きのものがありました。

歌詞は、ドイツの詩人フェルディナント・フライリヒラート(Ferdinand Freiligrath:1810-1876)による詩集「Zwischen den Garben」から「O lieb, so lang du lieben kannst!(おお、愛しうる限り愛せ)」の詩が用いられています。

この曲の解説ページがあったので引用させていただきます。

「おお、愛しうる限り愛せ O lieb, so lang du lieben kannst!」から始まる詩は、恋愛のことではなく、人間愛をうたったもの。

「あなたがお墓の前で嘆き悲しむその時は来る。だから、愛しうる限り愛しなさい。自分に心を開く者がいれば、その者の為に尽くし、どんな時も悲しませてはならない。そして口のきき方に気をつけなさい、悪い言葉はすぐに口から出てしまう。『神よ、それは誤解なのです!』と言っても、その者は嘆いて立ち去ってしまうだろう」という内容

でも、私には、やっぱり恋愛の曲に思えます。

こんなにもロマンチックで、美しい旋律、そして音の響き、愛する人を思い描きながら作曲し、捧げたいですもん。

これだけの名曲、チェロバージョン、ヴァイオリンヴァージョンなどもありました。

IMSLPプロジェクトによる楽譜(PDF)の参照、入手はこちらから

リスト ハンガリー狂詩曲 第2番

フランツ・リスト(1811-1886)は、ハンガリーに生まれ、ドイツやオーストリアなどヨーロッパ各地で活躍したピアニストであり作曲家。

ヴァイオリニストで作曲家でもあるパガニーニの演奏会を目の当たりにして、その超絶技巧に感銘し、そのリストは、ピアノによる超絶技巧によって観客を魅了するようになったとか。

特に、肩まで伸ばした長い髪を翻しステージに登場、両手にはめた絹の手袋を床に叩きつけ、黄色い声を上げながら奪い合う淑女たち。両手を高々と頭上にあげ、その手を鍵盤に叩きつけるようにしてドラマチックな演奏が始まると、失神した女性が続出したとか。今で言うところのヴィジュアル系ということになるのでしょうか。

後々シューマンの奥さんになったクララが、幼少時にリストの演奏を聴いて、その衝撃で号泣してしまったというエピソードもあったそうな。

ハンガリー生まれとは言え、当時はオーストリアの支配下にあり公用語はドイツ語。生涯ハンガリー語を習得することはなかったようです。

その情熱的な演奏と熱狂的な女性ファンが多かったリストは、様々な浮名を流し、多くの恋愛遍歴による波瀾万丈の人生を送っています。

あらゆる曲を初見で弾きこなしたと言われたリストは、「指が6本ある」と噂され、信じる人もいたほど。それはあくまでも噂だとしても、幼いころから指を伸ばす練習をして、早い頃から10度を軽々と押さえられたそうです。

実際、リストのピアノ向けの楽曲を聴いていると、とても一人で弾いているとは思えない作品だらけです。

ハンガリー狂詩曲はピアノ向けに創られた19曲で構成。この第2番が特に有名です。

これらの中から6曲を選んだものが、管弦楽版として自らの手によって、編曲されています。ピアノの原曲の第2番は、オーケストラ番では4曲目となっていますが、混乱を避けるため、原曲どおり「第2番」として表記されることが通例となっています。

さて、ラプソディ=狂詩曲とは、民族的、叙事的な内容を持つ自由な楽曲。既存のメロディをベースに、パート毎にメドレーで、気分のままに自由に曲が演奏されるもの。今で言えばブルースやジャズでアドリブでの演奏が見られますが、インプロビゼーション(即興)によって演奏されたものが、後々に楽譜化されたものとなりましょうか。

ハンガリーを自分の祖国と言い続けたリストによるこの楽曲は、民族舞踊音楽をベースとし、とても情熱的でソウルフルな作品。特に演奏会で熱のこもった演奏を聴くと、強い情動を覚えてしまう、大好きな楽曲の一つです。


ピアノバージョンは、日本人の血が流れているドイツのピアニストで最近注目の「Alice Sara Ott」による演奏が気に入っています。

IMSLPプロジェクトによる楽譜はこちらからPDF番を参照、入手可能です。