ドボルザーク – クライスラー:スラブ幻想曲


ドボルザークによる2曲の美しい原曲を、ウィーン出身のヴァイオリニストであるクライスラーがアレンジした「スラブ幻想曲」(Slavonic Fnatasy)。

前半部は、ドボルザーク「ジプシー歌曲集」(作品55番)の第4曲の「Songs My Mother Taught Me」(我が母の教えたまいし歌)、後半は、同じく「ロマンティックな小品」(作品75番)の第1曲で構成されています。

ソプラノの独唱による「Songs My Mother Taught Me」が、これまたいい曲で、演奏会とかで間近で歌われた日には涙ちょちょ切れモノでございます。

このピアニスト「Daniel Barenboim」がまたイイ味を出しておりまして、私はこのように歳を取りたいものだと思っているところです。

「ロマンティックな小品」はと言いますと、優雅な旋律の中に、時折のぞかせる憂いの表情が一層の美しさを引き立てるような、優美な曲。

これら2つの名曲を、ヴァイオリニストならではの豊かな表現力で、新たな価値として蘇らせたこの楽曲。
「編曲」の素晴らしさを教えてくれる、名作の一つだと私は思っています。

IMSLPによる楽譜(PDF形式)はこちらから参照、ダウンロードが可能です。

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ


ヴァイオリンの弦の響きだからこそジーンと来てしまう。

「あ” あ” 好いたらしいぃ~~~!」

(注)ここで言う「好いたらしい」とは、その昔、テレビ朝日の番組「タモリ倶楽部」内の一つのコーナーで昼メロドラマをパロって演じられたドラマの中で、決めゼリフのように使われ、狂おしいほどに切ない女性への想いを、タモリが演じる男性が発していた言葉です。いつも終わりはすれ違い・・・というオチだったのでありました。

・・・という、好いた女性への燃え上がる熱情として受け止めて、聴いています。 これは私が男だから勝手に思い込んでいるのですが。。。

甘酸っぱい情動を抑え切れない・・・というくらいに熱情を込めて弾いていただきたい曲なのであります。 若いコではなく、恋の酸いも甘いも経験した男性に。

サン=サーンスによるこの曲は、当時、親しかったスペイン出身のヴァイオリニストでツィゴイネルワイゼンでお馴染みのサラサーテに捧げられたとのこと。

情熱的なフラメンコのような舞曲風のロンド、そして美しく甘く切ない旋律。

私が子供の頃にN響の演奏会に行った時、元コンマスの海野義雄さんによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲がメインだったのですが、アンコールか何かで弾いてくださった、この曲の印象が強烈に残っています。

この曲、ドビッシーがピアノ向けにアレンジしており、私もピアノで弾いてみましたが、やっぱりヴァイオリンがいいですね。

この正月から始めたヴァイオリン、一月ほど音階練習に徹してきたのですが、耳コピーで最初の16小節だけ、ここ数日、何回も弾いて一人で悦に入っております。

IMSLPによる楽譜(PDF形式)はこちらから参照、ダウンロードが可能です。

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第2番 第三楽章「鐘のロンド」


ヴァイオリンの超絶技巧奏者として名声を誇ったイタリアのニコロ・パガニーニ(Niccolò Paganini:1782-1840)はヴァイオリンだけでなく、ヴィオラ奏者、ギタリストであり、作曲家として多くの作品を産みだしています。

盗作が横行した当時の事、楽譜は演奏会の数日前にようやく配布し、演奏後、楽譜はすべて回収した徹底ぶり。死の直前に楽譜のほとんどを焼却してしまったこともあって、現存している楽譜は、彼の演奏を実際に聴いた人たちによって譜面として書き起こされたものがほとんどだそうです。

ヴァイオリン協奏曲は、実際には12曲書いたようですが、現在でも世に伝わる楽譜は6曲。
その中でも第2番は有名で、特に第三楽章は「ラ・カンパネラ=鐘」、「鐘のロンド」として親しまれています。
もちろんヴァイオリンの超絶技巧のオンパレード。

当時、「パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」とまで言われたほど。
実際、私が子供の頃、この第2番を演奏会でホールの前から5列目くらいの席で初めて観た時、あまりの凄さに、呆気に取られたとを鮮明に覚えています。

パガニーニの曲の中に出てくる超絶技巧には、まるでヴァイオリンが歌っているように感じてしまうことが多々あります。まるでイタリアオペラを観ているように。

パガニーニの演奏会を訪れたピアニストのフランツ・リストが感銘を受けて「自分はピアノのパガニーニになる!」と言い、超絶技巧の腕を磨いたということは有名な話。

そんな事もあってか、この「ラ・カンパネラ」を「パガニーニによる超絶技巧練習曲集の第3曲」、「パガニーニの「鐘」による華麗な大幻想曲」、「パガニーニによる大練習曲」としてアレンジした作品を遺しています。

次の動画は、幼い頃から神童と評され、現在でも世界的に活躍しているEvgeny Kissinによる「リスト:ラ・カンパネラ」です。

私が5年に1度くらい、気まぐれでピアノで弾く”なんちゃって”ラ・カンパネラは、右手高音部を割愛したもの。とても他人に聴かせられるものではありませんが、リストのバージョンではなく、「パガニーニ – (自分の名前)ラ・カンパネラ」とした大いなる変奏曲としてしまえばいいのですね(苦笑)

この他にも、パガニーニによる楽曲はブラームス、リスト、シューマン、シュトラウス、ラフマニノフなど数多くの作曲家に大きな影響を与え、その主題による変奏曲やアレンジした作品が数多く創られています。

IMSLPプロジェクトによる楽譜(PDF)の参照、入手はこちらから

ヴェチェイ 悲しみのワルツ(Valse Triste)


Valseとは、フランス語などでワルツ。Tristeは悲しみ。

この「Valse Triste」というタイトルがついた楽曲は結構あって、今回は、ハンガリーのヴァイオリニストで作曲家のフランツ・フォン・ヴェチェイ(Franz von Vecsey:1893-1935))による作品。

私の身体の中には割りと頻繁に、演歌の他に、短調な3拍子の血が流れます。(苦)
たまに頭にハチマキを巻いて「悲哀だ!悲哀だ! 悲哀だぁ~~~!」と叫びたくなる衝動に駆られます。

私が作曲する曲も、実際マイナー(短調)でゆっくりとした3拍子のものが多いです。

こちらの楽曲もISMLPプロジェクトホームページからPDFによる楽譜が入手可能ですが、ピアノとヴァイオリンによる楽器構成が基本となっています。・・・オーソドックスな演奏風景となりますと、こちらのKinga Augustynさんの演奏のようなカンジになるようです。

チェロの響きにもよく合う曲ですね。チェロ&ピアノバージョンはこちら

ハンガリーの打弦楽器ツィンバロンと合わせた、N響のコンマス 篠崎 史紀さんの演奏も秀逸。

ピアノ用にアレンジされたバージョンもありました。

クライスラー 愛の悲しみ「Liebesleid」

オーストリア出身のヴァイオリニストで作曲家でもあるクライスラー(Fritz Kreisler)による「3 Old Viennese Dances」。
1曲めのLiebesfreud=愛の喜び(上の動画の後半で演奏されます)、3曲目のSchön Rosmarin=美しきロスマリン(YouTube動画へのリンクはこちら)はとても有名で、テレビのBGMとして、結婚式やパーティなどを華やかに演出する音楽としてもよく使われています。

これら有名な2曲に挟まれているLiebesleid=愛の悲しみ。

演歌の血が流れている(苦笑)私好みのマイナーなワルツです。

ラフマニノフにより、ジャズのテーストが織り込まれたようなピアノ向けにアレンジされた変奏曲も素敵です。

さらには月刊少年マガジンで連載の「四月は君の嘘」にちなんで演奏された、クライスラーによるオリジナルのヴァイオリンバージョンと、ラフマニノフのピアノバージョンを合体させた試みもとても興味深く、素晴らしいものとなっています。

IMSLPによる楽譜はこちらからPDF形式でダウンロード可能です。

(Arrangements and Transcriptionsタブにラフマニノフによるピアノバージョンの楽譜もあります)